ジャバ・ザ・ハットリ
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ショボい企画を持ってきたカッコ悪いようで、実はとてもカッコいい青年に見習う

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あるインド人青年が彼曰く「スゲー企画」があるから、それについて意見が欲しい、となって会社の昼休みに会って意見した。ぶっちゃけその「スゲー企画」とやらは強烈なショボさだったのだが、そんな彼の態度はとても尊敬に値するし見習おうと思った話。

職場の同僚インド人エンジニア K が「インドから来た若い男で『いい企画があるのでちょっと見て、エンジニアとしての意見が欲しい』って言われているが、ひとりで行くのはイヤだから一緒に来てよ」と言われた。ひとりで行くのがイヤという理由で他人を誘うのはいかがなものか、と思っていたのだが、なんか流れで私も参加することになった。

職場近くのカフェに行くとその彼が居た。見た目だけで異人種の年齢を推測するのはなかなか難しいが、きっと彼は若い。

で、さっそく彼の「スゲー企画」のプレゼンが始まった。私の正直な感想としては「しょうもなー」だった。まずプレゼンが洗練されてないし、その内容も一昔前のアイデアを「え?いまさら」感が半端なかった。その企画自体はあえて詳しく説明するまでもなく、そこがここで書きたいことではない。企画はまーよくあるヤツと思っていただければいい。

その青年は自分でそれなりのプロトタイプを作って、私達に見せながら下手なプレゼンで「これはいずれスケールして、フェイスブックやグーグルを追い越す」と言っていた。同僚の K と私が率直な意見を言った後、青年と分かれて職場に戻った。青年と別れた後の帰り道で K 曰く「あまりにもイケてなさすぎて、どこから指摘していいのか迷っちゃったよ」と。企画がイケてないのは一目瞭然だ。だからその青年は意見を求めていた。正直、その青年に会った当日は「しょうもないことに無駄な時間使ったな」ぐらいの感想でしかなかった。

ただそこから2,3日経ってなんだかモヤモヤと心に残るものがあった。そして伊藤穰一の「9 プリンシプルズ」を読んでついに腑に落ちるモノがあった。

私は青年の企画のショボさに目を向けるのではなく、彼の素晴らしい態度から学ばなければならなかったのだ。

実はこころのどこかで、ショボい企画でも屈託なく突き進んで作ったプロトタイプをどこの誰かも分からない日本人にまでプレゼンしてしまう、あの青年を羨ましいと思っていた。ウェブ上には他人の行動に対する斜に構えた評論で溢れている。しかしどう考えても実装するヤツの方が、批評するだけのヤツなんかより断然カッコいい。

その青年は一見するとなんかかっこ悪い奴に見えてしまいがちだが、じっくり考えるとカッコいい男だな、と。どんなに少なく見積もってもこんな「ダメな企画持ってきた奴がいたわー」なんてブログ書いてる私の数千倍はカッコいい。

あの青年の企画はそのままではきっと成功しない。ただあの青年と同じ態度で挑む人達の中から次の成功が生まれる。(「同じ態度で挑む人達の中から」と言っただけで、「彼が成功する」とは言ってない)

私の MacBook のフォルダにはやりかけて途中で放置した個人プロジェクトがわんさとある。もしそんな放置プロジェクトをあの青年が閲覧したら、言葉には出さずとも、こう思うに違いない。「なぜ完遂して、公開しないのか?」「批評されるのが怖いのか?」「面倒で怠けているだけだろ?」「実装してなんぼのエンジニアって分かってんのか?」と。

という訳で私も彼に見習い、個人プロジェクトのひとつを完成させて公開させることにした。公開すればボロクソに言われたり、辛辣な意見を受けてヘコむかもれない。それでも「言う側」より「言われる側」に立つほうがずっと意味があるからだ。

今、地球上でもっとも頭脳明晰な人のひとり伊藤穰一が「実装!」「実装!」と考える理由は 9 プリンシプルズにある。とてつもなく情報量の多い書籍なので、じっくり考えてから書評を書くつもり。

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