ジャバ・ザ・ハットリ

ベルリンのスタートアップで働くソフトウェアエンジニア

個人開発者のAndreyは今、世界で最も熱い男。彼のブログから学ぶ個人開発のあり方

2019-01-20個人開発

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Andreyは先日、ProductHuntのメイカー・オブ・ザ・イヤーに選出されたウクライナ出身の個人開発者。彼のブログには多くの学びがあって全ての個人開発者は必見だな、と感じたので紹介する。

Andrey’s Hardcore Year
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Andreyは時々ツイッターのタイムラインに入ってきて、面白い人だなーぐらいの認識だった。年末ごろから彼のアプリの収益性もうなぎのぼりになり、ついにメイカー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのを機に彼の全てのアプリとブログ記事をチェックすると、その考え方や手法から多くを学ぶと同時に気が付いた。 「Andreyは今、個人開発の世界で最も熱い男のひとりだ」と。

なぜ彼のブログが個人開発者にとって要チェックなのかの理由は次の3点。

  1. 月次での収益金額の詳細が公開されている
  2. 商品とアプリの分野が多義に渡っている
  3. 発展途上である

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1. 月次での収益金額の詳細が公開されている

Andreyのサイトにアクセスして目につくのがこれ。

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月次の収益をサブスクリプションと総売上に分けて表示している。最初は2018年の3月から。これはAndreyが個人開発で生きていくと決断して仕事を辞めた月。その3月の収益はたったの161ドル。こんな状態からスタートして、各月のデータを全て公開している。

なんてステキな男なんだ。

さらに彼は複数のプロジェクト(これ書いてる時点で9つ)を持っており、それぞれプロジェクトの内訳まで出している。なのであ「あーあのプロジェクトは収益性はイマイチだな」とか「こっちのは結構いいな」とかが鮮明に分かる。

数字をじっくり見ていくとこのブログを書いている時点で月次収益が$2,542となっている。この数字だけ見ればそこまで大成功とは言えないかもしれない。でもブログでその詳細と過程をじっくり観察すると、ここから伸びていくことが容易に想像できる。おそらくメイカー・オブ・ザ・イヤーに選出されたのもこの現在の数字だけを見ているのではなく、この将来性に票が集まったことは明らかだ。

なので今のこの記事を読んでいる方で少しでも個人開発や自分のアプリでマネタイズすることに興味がある人はリアルタイムでAndreyの動向をチェックすることをおすすめする。こんなの何年か後にAndreyが大成功した後でブログやらを振り返って見てもきっと大して面白くない。彼が 成功していくその過程を共に体験し学ぶこと に価値があるのだ。

2. 商品とアプリの分野が多義に渡っている

Andreyの公開されているプロジェクトは今のところ9つ。つまり1発当たってそれにしがみついている1発屋ではない。複数のプロダクトを持って、それぞれのプロジェクトに対しても良かった点と悪かった点を彼自身が振り返っている。

What I’ve made - About Andrey Azimov

中には買収提案があって、売り抜けたアプリもあるし、そのままAndreyのメンテナンスにより継続して収益を生み出し続けているのもある。プロジェクトのほどんどはソフトウェアアプリだが、彼はハードウェアの商品にも挑戦していたりする。

image Macの横にある赤いボタンが商品。

この商品を売り出した結果とそこからの学びは全てブログに綴られているので読んでみてください。とてもおもしろかった。

プログレスバーOS X

また別のプロダクトで名前は「プログレスバーOS X」というのがあって、これはMacのメニューバーに以下のような進捗バーを表示を載せるアプリ。

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今の時点で1日の何%が過ぎたのか、1ヶ月の、1年の何%が過ぎたのか、自分で設定した期限の何%か、がひと目で分かるバー表示。人間はわりと無駄に時間を過ごしがちだが、誰だって寿命や期限がある。それを可視化することでより充実した人生やプロジェクト納期を過ごせる、という発想。

彼がその開発が完了して意気揚々と爆発的に売れることを願って5ドルで売り出したところ、多くのユーザーから「なんで無料じゃねーんだよ」とのコメントが殺到した、と。で、そのコメントの一部を抜粋していて。

I really hate paid stupid apps like this in Apple ecosystem.
ホントこういうバカなアプリに課金するアップルの仕組みが嫌いなんだよ

Five dollars for this? Are you NUTS?
これに5ドルって?お前の頭は大丈夫か?

Andreyには申し訳ないが、最後のコメントを読んだ時に思わずプッと笑ってしまった。コメント主がそう書いてしまう気持ちもなんとなく分かるし、Are you NUTS?の最後の単語が大文字なのもプッと吹いてしまった。

しかしAndreyはこの後、1200万のフォロワーを抱えるNas Daily氏 がこのプログレスバーと同じコンセプトのTシャツを着ていたことからダメ元でコンタクトをとって、そこから起死回生を成し遂げていく。ステキな話だと思いませんか?詳細はブログでご確認ください。

Andreyが辛辣なコメントを受け取った時の考え方としてこう書いている。

If people are bitching about the price you hit the right spot. Because if they don’t bitch they either don’t care for your or they think it’s a bargain

客が値段に対して文句を言いだしたらそれは正しい製品戦略にのっている証拠。誰も値段の文句を言わなかったら、客はまったくその製品に興味を持ってないか、単なるバーゲンセールで不必要なほどの低価格を提示しているかのどちらか。

彼のブログにはそうした実践した者だけが得る実践者の知見に溢れている。たくさんのプロダクトを自分の手でリリースしまくる人の学びは、批評してるだけで何もしないヤツなんかのよりも断然に深い。

3. 発展途上である

やってることを見ても収益金額を見てもAndreyはまだまだ発展途上だ。そこが魅力であり、私がおすすめする理由にもなる。

なぜなら絶対的な正解ではなく「もし私が同じ立場だったらどうするか?」と考える機会を与えてくれるからだ。

これがもしスティーブ・ジョブズやヘンリー・フォードの伝記とかだったらそうはならないだろう。もう実績が突き抜けすぎていて完全に教えてもらうモードになってしまう。ジョブズがiPhoneをリリースした際の話を聞いて「いや、もっとこうした方が良かったんじゃない」なんてなかなか考えられない。

Andreyのプロダクトはどこか完璧とは言いがたく、それでも収益は出していて、なんかハラハラドキドキな感じがずっと続く。結局、世の中にプロダクトをリリースするのに絶対的な正解はなく、不安定と共に突き進み走りながら改善していく以外に方法は無いんだな、という当たり前のことが伝わってくる。

Andreyには「人を巻き込む力」がある。ブログを探ってくとAndreyが多くの人に助けられているのが分かる。泣きたくなるほど辛口で的確なアドバイスをくれる友人John O’Nolanをはじめとして、その友人達も個性派揃いだ。 まだ大成功もしていない若いウクライナ人になぜ誰もが手を差し伸べるのか。現に私もこうして頼まれもしないのになぜか彼の応援ブログまで書いてしまっているし!

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それはきっと正直に自分の思いを伝え、失敗も含めて挑戦する姿を見せているからだろう。

Andreyのブログのどこを見ても「世の中を良くする」とか「恵まれない人を助けたい」みたいな、いかにもスタートアップの創業者が理念として言いそうなことがまったく書かれていない。あるのはただ「仕事辞めてしまったー!期限までに自分のプロダクトで目標金額の収益を達成してやるぜー!」ばっかり。

その正直に挑戦する姿が人の心を掴むのだろう。少なくとも私はカッコいい理念を掲げてその気になってるCEOより、多少はかっこ悪くても正直なヤツの方に好感を持つ。

別に理念が悪い訳じゃない。本当に心の底に立派な理念を抱えている人もいて、それはそれで素晴らしい。

ただAndreyを見ていて思うのは「とにかくいい感じのこと言っとかないと」という変な動機から公表する理念だったら不必要ということだ。人は不器用でも正直に本気で挑戦し続ける姿を見て応援したくなるモンなんだし。

まとめ

Andreyはサソリに刺されたり、ビール瓶で頭しばかれて出血して病院に運ばれたり、海外在住者にありがちなトラブルにあってもめげずにプロダクトを作り続けている。
そんな姿を見れば「よし!俺もやってやるぞ!」となること間違いない。

もしこの記事をお読みの方でなにかに挑戦している人は彼のブログを読めばたくさんの学びを得るはず。おすすめです。

Andrey’s Hardcore Year

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